パケットをせき止めるフィルタ,それは,人が繋がりをかき消すための「心の壁」と同義だ。しかし,それでも人は繋がりを求める。その心が,フィルタを超える新たなパケットへと進化させる。ここでは,ITの話ではなく,心理学,として,その様を見つめよう。
7日午前10時半に,米国ヤフーが分散型サービス拒否攻撃を受け,3時間にわたって断続的にサービスが停止した。翌日,大手電子小売りサイトのバイ・コムが同様の攻撃を受け,その5時間半後には,大手オークションサイトのイーベイも攻撃を受け,他と同様,ユーザーからのアクセスに支障をきたした。夜7時を回って,ニュースサイトのCNNも攻撃を受けた。分散型サービス拒否攻撃とは,たくさんのサーバーから同時にパケットを送り,通常のアクセスを受け付けないようにしてしまう。
この分散型サービス拒否攻撃は昨年の9月ごろから,徐々に報告があった(ZDNet Newsの記事)。ポートスキャンによってセキュリティーホールのあるサーバーを見つけ出し,そこに入り込み,攻撃用のソフトをインストール。その後細かいやり取りがいろいろあるが,時限で同時にひとつのサーバーに対してパケットを送る攻撃を加える。それが複数台から同時に行われるため,ここからのアクセスは受け付けない,と簡単に攻撃を遮断することができない。複雑に,且つ,簡潔に,繋がりし者の弱点が見える。
繋がるということは,ひとつの病ではないかという考えがある。自らの欠如を埋めようと,人は繋がりを求める。だが,自分以外のなにかが,その欠落した部分を補うというのは幻想に過ぎない。止めどないせめぎ合いに結局は渇きしか得られぬ男と女,制度という枠の中で形式と騙しあいに過ぎぬことを心の中では悟っている親と子。それでも,繋がることを求める人間がいるように,分散型サービス拒否攻撃も,防ぐ術を,持たない,永遠に。
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